デブサミ 2020 春 備忘録4:[14-A-6] 世界最高の靴売場をシューカウンセラーとともにデジタル変革してみた
Developers Summit 2020 春を聴講してきたログ。仕事柄デジタルビジネスへの取り組み方やよいチーム開発とはという観点を重視して聴講しました。業務の都合上午後のセッション中心になってしまったのが残念なところ。
とはいえおもしろいセッションを色々聞けたので、いくつかを備忘録もかねて公開します(というか久々に書こうと思う余裕ができた最近)。
- [13-C-6] 礼節から始めるチームの健康と信頼性
- [13-D-5] ともにつくる「DX」〜事業会社、スタートアップ、グローバル、そして・・・「あなた」〜
- [13-E-8] チームをつくるモブプログラミング ~内側と外側から語る~
- [14-A-6] 世界最高の靴売場をシューカウンセラーとともにデジタル変革してみた ★当記事★
[14-A-6] 世界最高の靴売場をシューカウンセラーとともにデジタル変革してみた
鈴木 雄介, 河村 明彦 アイムデジタルラボ
アイムデジタルラボ:三越伊勢丹グループにおけるDX推進のための会社
(元JJUG会長の鈴木さんだった、強い)
YourFIT365というサービス
足の3Dスキャンから最適な形状のパンプスをレコメンドするサービス 自分のスマホでいつでもデータを確認できる
- 昨年夏から開始
- 対象ブランドは現在 25
- 計測者数 5000人以上
2年間模索(これまでの道のり)
販売担当の想い:足に合う靴を提供したい
自社内の独自資格制度を作るなどもしていたが、販売員の個人スキルの差を埋めるために3D計測を活用できないかという仮説からこの取り組みが始まった
この取り組みはシステム部門主導ではなく、現場部門が自分たちの予算で動いていた(自分事としてやっていた)
計測器をいろいろ探した結果、国内のアイウェアラボラトリーを選定した。 選定理由として、機器の精度もあるが、企業モチベーションや理念にシンパシーを感じたことが大きい。
立ち上げ(どうやってサービスを作っていったのか)
既存の開発プロセスは切り離して実施した方がよい、との考えからアジャイルで開発でやることにした。それを後押しする経営のコミットもあった。
Graat社(登壇された鈴木氏が代表を務める企業)からアジャイルコーチを招聘し、進めることとなった。
プロダクトオーナーは現場のメンバーから立てることになった。これは、現場と開発チームが直接やりとりするのが最も重要とのことから、間に情シスが挟まらない体制にするためである。
- 役員のコミット
- 現場の担当を情シスに異動することで
- 社内の構造的(政治的かな?)な課題をクリアさせた
- ただし情報技術に明るいから、というのではなくPO支援という形で現場の方との橋渡し役という役割りとしたており、またこれが重要なポイントでもあった
元々店舗の改装日が決まっていたため(=リリース日として決定済みの状態) 4月から8月28日までの開発プロジェクトとしてMVP開発を進めることとなった。
多くの関係者がアジャイルもなにもかも初経験でありまたどういうモノを作ればいいのかの共通認識を持つ必要があったため、バイヤーからカウンセラーから関係者全員をあつめてのワークショップを数回おこない。 リーンキャンパス、カスタマージャーニーなどをGWくらいまで作成していった。
その結果、ビジョンと優先順位が共通認識としてもてた。
木型のデータ収集も重要な要素だったが、本来は門外不出なもの。 だが、三越伊勢丹のブランド信頼より数社賛同していだきスタートに至ることができた。
業務とITを同時に検証するために使った手法
サービスブループリント
レーンを決めてヒトやシステムが何をするのかを決める(UML的なものか)業務フローとシステム構成を並行して考える手法。システム側の制約で業務を変える部分を見つける・合意をとるのが目的。
体制
- 内製エンジニア+外部のエンジニア
- ただしアジャイルは未熟な状態で、3か月で初回リリースを目指す
技術選定
- Spring Boot / Anguler
- Docker on Azure app servuice
基幹システムのAPIチームからも多くのデータ提供などの強力をいただけてMVPを無事リリース。毎日数十件の計測をしつつ開発側にフィードバックを行っており、リリース後2か月間くらいかけてブラッシュアップ(毎週何等か機能アップデートが入る感じ)を続けていった。
次に向けて(現在~)
11月くらいから意図的にアップデートサイクルを緩めて安定期にしている
安定期:予約件数を絞って対応することで顧客に提供する価値と業務のバランス/効率化を測ろうとしている
当初の目論見では、接客時間の効率化に繋がるのでは、という想いがあったが実際は顧客満足度が上がるとともに接客時間も長くなっていた。悩みを抱える顧客の状態が明らかになったというメリットがあるが、接客負荷のコントロールも重要になってきた。
このサービスを利用した顧客ムーブの傾向として、夏に買ったお顧客がまた秋冬に買いに来るというサイクルが生まれていたため、同じ木型の新商品をレコメンドしてみたらコンバージョン率が明らかに高かった。
このように今までとは違う観点でのアプローチを見定める必要も出てきた。
また、足形データから、一般論との乖離が見えてきたりもする。 一般には日本人の足形は細くなっていると言われているが、このサービスの顧客は幅広だったりと一般論で取りこぼしている領域の形が見受けられた。このような観点についても商品開発・ブランド側にフィードバックもしているため、今後の開発サイクルにも影響を与えることができそうである。
新たな顧客開発のために歩き方講座やトレンド講座を抱き合わせてみたりといった顧客獲得のための取り組みも実施している。
ともにつくる
関係者各位全員が当事者意識をもって行動することが一番重要である。
極端に言えば、当事者にならない人は不要
- 企画部門問題
- 情シスの企画はアイデアだけで行動に繋がらないので当事者意識が薄いのでこういうDX的な開発ではあまりいても効果がない
アナログと、ともに作る
デジタル技術を活用しているが、デジタルが中心ではない
アナログがあるからデジタルが生きる、デジタルがあるからアナログが伸びる、これはDXの本質ではないか
ツール先行は成功しない、「それAIでなんとかしてください」というのは本質的にうまくいかないスキームである。
DX導入パターン
2019年に立ち上げたアイムデジタルラボは、DX推進向けの機能子会社であり、既存の枠踏みのなかでやりにくいことをやるための組織である。
アイムデジタルラボは出島型の組織として開発を進めている。
適度な自治権を与えられているが、三越伊勢丹としての運用やセキュリティのルールは守っている。
そして、広げる
メンズのサービスも 2020/3/25 からイセタンメンズ館にてスタートする。 (行ってみよう)